平成29年2月9日
コラム「気づきのココロ」 第11回
頼朝と義経の不和に見る “ホウレンソウ不足”の大いなる弊害
先日、BS放送で宮尾登美子さん作品の映画を放送していました。残念ながら宮尾さんは2年ほど前に他界しましたが、映画を見ながら10年ほど前の彼女の講演を懐かしく思い出しました。
厳しい人生を生き抜いた彼女は、80歳を過ぎても若々しくとてもチャーミングです。こんなに素敵な80代になれるなら年を重ねるのが怖くないと思わせてくれるそんな宮尾さんでした。
「義経」の元となった平家物語の執筆を決意したのは、74歳だったそうです。その動機は、ほかの人が書いた平家物語には「女性に名前がない」からだそうです。たしかにすべての女性は「女」として扱われている。そこで宮尾さんは全員に名前を与え、女性の目から見た平家物語を書こうと決意されました。
華やかな勝ち戦を続けた義経でしたが、兄・頼朝の不信を買い、弁明のため鎌倉へ出向いて兄弟の情を訴えつつ許しを請いますが、二人の関係は、すでに修復できないところに来ていました。スーパーヒーローから一転、悲劇のヒーローになっていく義経の生き様は、歌舞伎の「勧進帳」を始め様々な物語で語り継がれ「判官贔屓」という言葉も残しました。義経の悲劇の底流には、上手な報告、連絡、的確な相談が欠けていた、その訓練が出来ていなかったように思われます。私の職業柄でしょうか・・・。
図のように、人はそれぞれ異なった「経験、体験、育った環境・年代」を持っており、これによって生じる「価値観」を大切にします。価値観が違えば、どのような自分でありたいかという「自己感」も違います。また、置かれている立場によって、何を成し遂げなければならないかという「義務感」も違います。さらに人間関係を複雑にしているものが「心情」、人との相性と言っても良いでしょう。このように人は皆、それぞれ違った地図を持っているのです。
しっかりとした双方向のコミュニケーション、報告、連絡、相談をして相互理解を得なければ、頼朝・義経兄弟のように、大きな食い違いと悲劇が生まれます。
そこで今回はホウレンソウ(報告、連絡、相談)について学術的な観点から定義、具体的な方法論を述べてみたいと思います。
ホウレンソウの定義
報告 | 職務上の経過や結果を関係者に知らせること。
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連絡 | 自分の意見や思いは入れず、簡単な事実を関係者に知らせること(長期に亘る仕事の途中経過や変更になったことなど) |
相談 | 自分が判断に迷ったとき、上司・先輩・同僚の参考意見やアドバイスを聞くこと。指示が不明確でわからないときは確認すること。
自分の考えも持っていくと良いでしょう。 |
ホウレンソウの注意点
- 相手の立場に立つ(相手の立場に合わせた言葉や方法を考える)
- 自分の立場もよく把握する(権限と義務の範囲)
- ポイントを整理して、簡潔に話す(5W3Hを常に頭に入れる)
- 曖昧な表現を避ける「まあまあ」「ほどほど」「近いうちに」「結構です」
- 事実と自分の考え・意見を分ける
- タイミングを考える(相手の都合や一番効果的な時を逸しない)
- 相談の時でも自分の考えを用意しておく
- 約束の期限にできない時は相手に許可を得、中間報告をする
頼朝、義経兄弟のような悲劇にならないよう、適切なホウレンソウを心掛けたいものです。