平成28年5月11日

コラム気づきのココロ」 2回 ヒトの印象は瞬時に決まります

 

colum_2-1「いらっしゃいませ、○○様。松の間へご案内致します」

初めてのお客様なら名前を聞いただけで、リピーターの場合は顔を見ただけで、仲居さんはさっとお部屋へご案内する。

そして、同じ月に複数回いらした方には同じ料理と同じ器は決して出さない。以前残された料理は二度と出さない。好きなお酒の銘柄は黙っていても出てくるし、大事な話しがあると察したら言われる前に退室する。帰り際にはコートや上着が席のうしろに揃えてあり、別の座敷のお客様とハチ合わせしそうな時はさり気無くお茶などを勧めてタイミングをずらす……。

これはある有名な料亭で厳守されている接遇です。

このように対応されたら「また来たい」と思うばかりか、友人にも伝えたい気持ちになるはずです。まさに感動の接客。人の手が価値を生み、空間を演出するフリンジヒューマンサービスの粋と言えるでしょう。

しかし、ここまでの応対は一足飛びには難しいので、今回は「感じの良い人」とは何か、そう思わせるための基本を紹介したいと思います。

 

人が初めて誰かに接した時、感じの良し悪しを決めるのは僅か5~6秒と言われます。俗に第一印象と呼ばれるもので、3分もすると「こんな人だろう」と勝手に判断されてしまう。これはアメリカのメラビアンという心理学者が提唱した理論で、第一印象は非常に瞬間的かつ主観的に形成されるものなのです。

 

人とのコミュニケーションは視覚による印象が55%、声・話し方が38%、会話の中身が7%を占めると言われます。

何をどう話したかという実態は、その実態以上に話し手の印象が大きいわけです。

好印象が顧客獲得に直結することを考えれば、身なりや立居振舞、表情に細心の注意を払わなければならないのです。見た目の印象を構成する要素を列記しましょう。

 

【 表情 

最も大切なのが表情ですが、東洋人は口角が下がっていると言われ、自分ではそんなつもりがなくてもつまらなそうに見えてしまう。これで損をしてる人も多いでしょう。

笑顔を大切にするアメリカでは小学校の宿題で「笑顔の研究」が出るそうです。

家に帰って鏡を見て、どの筋肉をどう動かしたら一番素敵なスマイルになるかを学びます。

笑顔を作る時、写真撮影の「チーズ」が一般的ですが、私は「ウ・イ・ス・キー」をお勧めします。より素敵な笑顔が出来上がります。

また、舌を上の歯の裏側につけて奥歯を噛み締めると笑顔の基本形ができあがります。これを毎日鏡の前で行うことで、理想の笑顔が得られるはずです。

日本でも「和顔施」という仏教の言葉があります。どんな時でも柔和な顔を施していると、この世は銀行と同じで満期になると幸せやお金で返ってくると言われます。路上で道を尋ねられるようになったらしめたもの。笑顔は万国共通のコミュニケーションツールです。

 

【 視線 

次に大切なのは視線の合わせ方です。どんなに笑顔が素敵でも相手に視線が合わせられないと説得力に欠けてしまう。初対面で恥ずかしいという方は相手の片方の目を見て下さい。すると視線が定まり、「物」を見ているような感じになって恥ずかしさが軽減されます。

とはいえ会話中に相手の目を凝視すると「私の顔に何かついているのかしら?」と不安にさせるので、時々下にずらします。お客様が男性の場合はネクタイの結び目まで、女性に対しては胸元まで覗き込まないように気を付け、口元くらいで止めて下さい。

視線を動かす時はなめるような視線にならないよう、点で動かすことを心掛けます。相手との距離は互いに手を上げて触れるか触れないくらいの距離、これを「快適ゾーン」と言いますが、一般的には120~150㎝程度でしょう。余談ですが、恋人どうしの「プライベートゾーン」は口と口の距離が50~60㎝程度です。仕事柄、相手のプライベートゾーンにまで踏み込む方は細心の注意が必要です。

 

【 アゴの角度 

アゴの角度を上げ過ぎると、高飛車で横柄な印象を与えます。アゴのラインが床と平行な線をゼロ度とすると、これが20度以上上がってしまうと横柄な雰囲気を出してしまう。猿の前でアゴを上げると威嚇の動作に映るため、飛び掛ってくるそうです。逆にアゴが下がり過ぎる(マイナス20度以上)と消極的で自信がなさそうに見えてしまう。お客様に応対する時はほんの僅かアゴを上げると明るく自信に満ちた印象を与えます。逆に相手から話を引き出したい時はアゴを少し引きましょう。相手の話しやすい状況を演出します。

 

【 身だしなみ 

身だしなみには清潔、上品、控えめという三原則があります。

colum_2-2《 清潔 》

自分の日常生活と関係なく、相手がどう感じるかです。最大のポイントは髪型で、男性の場合は前髪が長く垂れていると疲れた印象を与えてしまい、やる気がなさそうに見えるので、おでこをすっきり出して下さい。横は耳が見えるぐらいの長さ、後ろはYシャツの襟で髪を持ち上げるようだと不潔感を与えます。女性も前髪が目の長さまで下がっていると顔に影ができ、暗い印象になってしまう。またお辞儀をした時に横の髪が顔を覆うと不潔感を与えるので、アゴの線と首筋を出すようにして下さい。

 

《 上品 》

TPOに合った着こなしです。制服はユニフォームと言い、ユニは同一のという意味です。皆が同じように着ているから制服の美しさ、「集団美」があるわけです。一人だけ汚れていたり着崩していると目立ちます。ある会社で仕事のできる人とできない人に分けて新しい制服を貸与、半年後に回収して汚れをチェックしたら仕事のできるグループが圧倒的に綺麗だった。制服への心遣いと仕事の出来は一致するものなのです。

 

《 控えめ 》

お客様の集中力を切らさないためにも大切なこと。仕事中に華美な装飾をしていると、相手の気持ちが逸れてしまう。高価な腕時計や襟元で太いチェーンがじゃらじゃらすると、素晴らしい説明も説得力に欠けるどころか、「このショップは給料が高いのかなあ~」などと余計なことを想像させる。これは大きなマイナス要因になります。

 

 動作・仕草 

きびきびした動作はやる気を感じさせます。動く所と止まる所を区別するのがポイントで、「ながら動作」はだらしない印象を与えます。ふたつの動作を一緒にしないことも大切です。商品を手渡しながらぺこぺこ挨拶する姿は卑屈な感じがしてしまう。ホテルマンがきびきび見えるのはこの点を踏まえているからです。片足に重心をかけてだらしなく立っていたり、店内をだらだら歩くスタッフには緊張感が感じられません。

 

以上、5つの要素で人は半分以上(55%)、人の良し悪しを印象付けてしまいます。