平成28年12月21日

コラム気づきのココロ10回 「安全への取り組み」 の大切さ

 

colum_10-1「こちらの赤ワインはカベルネソービニオンを使用しておりまして・・・」

何やら一流レストランの会話のようですが、実は違います。実機さながらのモックアップ(飛行機の模擬機内)を使用して、客室乗務員の訓練中。そこで交わされた会話の断片です。

私を含めたJALスチュワーデスのOG30数名は、「OG会」主催の企画に参加しました。羽田整備場での機体整備、客室乗務員の訓練、そこにJALの機内食を一手に扱うTFK(東京フライトキッチン)も加わって、シンガポール線で食事をするという設定です。
早朝の集合にもかかわらず、これからフライトでもするかのように全員わくわく、思い出の地に三々五々集まりました。ご案内役の元パーサーからスケジュールの説明を受けると、それぞれ旧姓と期(当時は1期20名でクラス編成され、期によって入社年度がわかります)が記された名札をつけ、ヘルメットを被り、整備士さんの後についてボーイング777の待つ格納庫へ向かいました。

機体重量は新幹線8両分、翼だけでもテニスコートが2面できるというのだから、その重さや大きさには改めてびっくりです。あちこち立ち止まって説明を受けるのですが、リタイアから20年も過ぎているOGがほとんどにもかかわらず、まるで興味津々の子供ように行く先々でメモをとり、整備士さんに質問攻め・・・・・。

興味深いことがいくつかありました。
まず、飛行機の整備には大、中、小の三種類あるそうです。小整備は600時間(約1.5ヶ月)のフライト後に行なうのもので、中整備はその10倍の6000時間(1.5年)フライト後です。
このときは100名ものスタッフが、朝昼晩の3交代で8日間を費やすとか。大整備は中整備を4回実施した後、つまり6年に1度行なわれる大掛かりなもので、翼にはX線のフィルムを貼り、燃料タンクに金属疲労がないかを調べ、油圧系に渦電流を流したりと、細部にわたっての検査です。

colum_10-2置き忘れなどのトラブルが起きないよう、整備士が使う工具は個々の工具箱にしっかり収め、鍵をかけるなど個人管理を徹底します。
飛行機は人命を預かるだけに、細心の注意で万全を期す様子がひしひしと伝わってきました。にもかかわらず、今年(2016年)だけでもすでに5件の悲惨な航空機事故が起きました。つい先月もブラジルのサッカー選手を乗せた飛行機が燃料切れで墜落すると言う、あってはならない事故が起きたばかりです。

人間のやることに「絶対」はないということを念頭にさらなる厳しい安全対策を行って欲しいものです。

これは空の旅を預かる航空会社だけにとどまらず、他の業界においても安全対策は重要課題です。最近、高齢者の事故が後を絶たない自動車事故。これは本人のスキルに関わることかもしれませんが、一日も早く自動運転を実用化して悲惨な事故がなくなることを願うばかりです。

話は横道にそれましたが、元に戻しましょう!

最後に、案内役の整備士さんが私達に質問をしました。

「私は小学生が見学に訪れたとき、客室乗務員には4つの要素が必要だと説明しています。1.体力、2.どこでも眠れる、3.何でも食べられる、4.笑顔・・・。どうです、これでいいですか?」

OGの一人が即座に返しました。

「もうひとつ加えてください。『知的』でなければならないと」

全員、爆笑。どっと笑いの渦ができました。

和やかな雰囲気のまま整備場を後にすると、次は懐かしの古巣、客室乗務員訓練所です。我々の頃は2階建ての古めかしい訓練所でしたが、現在は近代セキュリティを導入した高層ビルへと様変わり。訓練期間も6ヶ月から1ヶ月程度に短縮され、日本人クラスだけではなくイギリス人やフランス人、中国人など様々な国籍の乗務員が、真剣な眼差しでリカーサービスやミールサービスの訓練を受けていました。

さて、早朝から積極的に活動し、お腹をすかせた私たちにとって待望の食事会が始まります。シンガポールまでのビジネスクラスに乗ったつもりで食事とワインをいただき、皆ご満悦、束の間のセンチメンタルジャーニーと相成りました。