平成28年6月6日

コラム気づきのココロ 第回 あなどるなかれ 名刺交換は初対面のとても大切な儀式です

 

colum_4-1私の友人に製麺工場の専務をしている方がいます。

ある人を介して某百貨店の飲食部の部長を紹介して頂き、社長である彼のお父様と一緒に営業へ行った時のこと。

 

応接室に通され、名刺交換となりました。社長が名刺をポケットから出そうとしたのですが、なかなか出てこず、間が持てなくなった専務は先に部長と名刺交換をしてしまいました。

やっとポケットから出した社長は、後からの名刺交換になったのです。交換を終えた直後、「今日はこれでお帰り下さい」と言われ、何故か分からず商談もできず、すぐさま紹介してくれた方に電話をし、帰された理由を聞いてもらいました。返答はこうです。

 

「名刺交換もろくにできない会社の人間とは、お付き合いしなくて結構です」……。

それを聞いて驚き、非礼を詫びて足繁く訪問し、誠実さが認められてようやく取り引きに漕ぎ着けたわけですが、専務いわく、「マナーを知らないと恐いですね」しみじみ語ってくれました。

 

取り引き相手を決定する時、価格や商品では優劣をつけ難い今の時代、このようなマナーが取り引き先を決める大きなポイントになっていることを改めて痛感した出来事でした。

 

名刺交換は初対面の儀式です。相手に与える印象は、極めて大きいと言えるでしょう。

よく、「あいつは偉そうに名刺なんか出してきて」という言葉を耳にしますが、名刺を先に出すことは決して偉い行為ではありません。

侍が「名を名乗れ」というように、名前を名乗ることはへりくだった行為なのです。

 

先述したように、自分の上司や先輩が同席している時に彼らを差し置いて先に出すのはマナー違反ですが、自分が上であったり、自分一人の時には積極的に出してください。

最近は大半の人が名刺を持っていますが、「活用してますか?」と聞くと、ほとんどの方が「あまり名刺が減りません」と答えます。

お客様に早く自分の名前を覚えて頂くには、口頭で言うより文字で残した方が効果的ですし、他の方をご紹介下さることにも繋がります。ためらわずに出して下さい。

 

私が月に1度接遇研修で伺う仙台の病院(老健も併設)では1,500名のスタッフ全員が、にっこり笑った顔写真入りの名刺を持っています。名刺の出し方、交換の仕方を全員が習得、患者さんや利用者の方に活用しています。

名刺交換のルールを知らない方も多いので、大切な点を述べておきます。

 

名刺交換のルール

 

ルール

名刺はその人の分身と言われます。腰より高い位置のポケットに、名刺入れの中に入れて持っていて下さい。

手帳や定期入れを使う人を見かけますが、これでは大切に扱っている印象を受けません。

またスラックスやスカートのポケットにしまうことも相応しくありません。お尻のポケットなど論外です。

ルール

相手の名刺はもちろん、自分の名刺であっても印刷されている部分にはベタベタ触れないようにします。

汚れていたり、角が折れていると印象が悪いものです。 名刺のやり取りは胸の高さで、重たそうに交換します。軽いものは重そうに、重いもの(ドア等)は軽そうに見せると振る舞いが奇麗に見えます。

「私はこういう者ですが」と差し出すのは丁寧ではありません。社名と自分の名前をきちんと名乗って下さい。

colum_4-2ルール

名刺を頂いた後、名前で呼べれば名刺入れにしまっても構いませんが、頂いてから「お宅様は」とか「お客様は」などと言うと大変失礼です。名刺を頂いたということは相手の存在を認めたことです。必ず名前で呼んで下さい。

覚える自信のない人は会話中、胸の高さで持っていても構いません。

また、椅子に座って対応する場合は相手の名刺をテーブルの上座、つまり出入り口から遠い所に置いて下さい。相手の名前を忘れても、視線を下に落とせば名前で呼ぶことができます。

ルール

交換の順序は上司が先ですが、自分が部下であるにも関わらず相手から上司よりも先に出された時は頂からず、「こちらが私共の課長の○○と申します」と、やんわり上司を紹介して下さい。

ルール

頂いた名刺には日付や場所などを記録して、必要な時にすぐ取り出せるようファイルして下さい。頂いた直後に書き込む人がいますが、その場では決してしないように。

以上、名刺交換に関わる基本原則を紹介しました。

 

お客様に自分の名前を覚えて頂くことは、リピーターや贔屓客を作るために大切ですが、お客様の名前を早く覚えて名前でお呼びすることも重要です。これは相手の自尊心を満足させる最高のサービスと言われるものです。

 

人の一生で、お互いに名前を覚えて関わりを持つ人数はどれくらいだと思いますか?

人生80数年と考えた時、通常は1000人、社交家で2000人ほどだと言われます。ただ、人の顔と名前を覚え、それをサービスという付加価値に繋げる職種の人はその数と内容において、一般の比ではありません。

 

有名な都内ホテルのドアマンは、なんと3000人以上の顔と名前が一致しているそうです。

政財界のVIPは、自分の名前がこのドアマンに知られているかどうか、彼の前を通りたくて仕方がないそうです。

彼の前を通る時、「○○社長、お元気でいらっしゃいますか?」と必ず名前を呼んで話し掛けてくるそうです。

超VIPになると、「△△社長、先日ニューヨークにいらしたそうですが、如何でしたか?」など、動向をきちんと把握していて、また、タイムリーな話題も提供してくれるそうです。

一度お会いしたいと願ってますが、まだ実現しておりません。が、数年前に彼と一緒に仕事をしていた方とお会いする機会がありました。

その方いわく、このドアマンは情報収集力が素晴らしく、つい最近、副社長から社長へ昇格した方とお会いしても、古い肩書きで話しかけるようなことは決してないそうです。

それゆえ、一介のドアマンにも関わらず重役待遇を受けているようです。

 

私は人の名前をなかなか覚えられなくて……」と言う人がいますが、覚える努力をしていないからだと思います。覚え方に定石はありません。自分流の記憶術を考えて下さい。

二度、三度と足を運んで下さるお客様は特に名前でお呼びすることが大切です。

名前を失念した時は、前回いらっしゃった時の話題を探ります。

共通の話題や共感できることがあるとお客様との距離がぐっと縮まり、親しさが増します。お客様と心の架け橋が掛かることを「ラポール」が掛かると言いますが、一人でも多くの人と「ラポール」をかけてください。